FlashとSEOの関係については以前から調べてみたいと思っていました。とはいえ、私の場合、SEOを意識するサイト制作が多く、SEOにFlashは向かないだろうという漠然とした考えから、たいていの場合、Flashそのものを使わないか、使ってもきわめて限定的な要素としてしか使うことがなく、特に調べることもなくここまで来てしまったというのが、実際のところです。

しかし、最近、Flashに関する面白い投稿を読んだことで、改めてFlashとSEOの関係が気になり始め、情報を集めてみることにしました。以下では、SEOの観点からFlashをサイト上で利用することの長所・短所について少し考えてみたいと思います。

「FlashのためのSEO」

冒頭で挙げた記事というのは今年(2009年)の11月19日付けで『Online Marketing Blog』に投稿されたMichelle Bowles氏の記事「SEO for Flash: 5 Tips and Best Practices(FlashのためのSEO ― 5つのヒントと最善の取り組み)」です。

Bowles氏は5つのヒントとして次のものを挙げています。

  1. GoogleはFlash内のテキストに関しては、通常のテキスト同様に読むことができ、FlashとHTMLの2つが用意されている場合はそれらを重複するコンテンツとして処理する。またFlashの内容はメタ情報としてhead要素内に付け加えることができるが、Flashの内容は単一のアイテムとしてインデックスされる。
  2. GoogleはFlash内のリンクを認識できる
  3. GoogleはFlashファイル内に呼び出される外部のコンテンツもインデックスできる
  4. GoogleはFlashを埋め込むための共通のJavascript技術をサポートする
  5. GoogleがAction Scriptで書かれたサイトをインデックスすることができる

但し、これらはまだ確実なものとはいえず、発展途上というのが適切です。またGoogle自身が『ウェブマスター/サイト所有者 ヘルプ』の「Flash and other rich media files」で認めているように、いくつかの制限があります。さらに、Googleができるからといって他の検索エンジンが、上記のような技術を有しているかというと決してそうではありません。

このことからBowles氏は、次の点をポイントとしてあげています。

  • Don’t use Flash as the navigation.
  • Embed Flash files into HTML pages.
  • Use descriptive page titles and meta descriptions.
  • Don’t include an entire site in one Flash file. Instead, break the content into multiple Flash files with different HTML pages.
  • Use Flash for design elements and less-important content, and use HTML for the most important page elements.
  • Enhance web fonts in Flash files by using slfr (…). Because the Flash styles enhance the HTML content rather than replace it, the engines can still read titles.
  • Flashをナビゲーションに用いない。
  • FlashファイルをHTMLページに埋め込む。
  • 説明的なページタイトルとmeta要素descriptionを使用する。
  • サイト全体をひとつのFlashファイルに入れてしまわない。代わりに、コンテンツを複数のFlashファイルで異なるHTMLページに分割する。
  • Flashをデザイン的な要素や、それほど重要ではない内容に利用し、最も重要なページ内の要素に関してはHTMLを用いる。
  • WebテキストのフォントはsIFRを使って装飾する。Flashによる表現は、HTMLのコンテンツを置き換えるものだというよりは、それを装飾するものであり、検索エンジンが(sIfrを利用しても)依然として、タイトルを読むことができるからである。

※sIFRについては『NOVEMBERBORN』あるいは『Shaun Inman』をご覧下さい。また日本語ではSig氏のArchivaの記事「選択可能なアンチエイリアス文字を出力する『sIFR 2.0』導入メモ」が比較的分かりやすいかと思います。

「検索エンジン最適化とFlash」

一方、SEOにおけるFlashの利用そのものに対し懐疑的な記事を書いているのが『SEO White Hats』の「Search Engine Optimization and Flash」です。

同記事は、検索エンジンがFlash内のリンクとテキストを解析できることが、Flashを検索エンジンにとって親しみやすい(friendly)ものにしているとはいえないとし、その理由を7つに分けて主張しています。原文をそのまま訳すと分かり難い箇所もありますので、意訳あるいは私の解釈という形で紹介します。

  1. まとめられたコンテンツがひとつのFlash内にあり、それらが異なるページに分割されていない。
  2. Flash内のテキストがセマンティックな形でマークアップされず、デザイン重視で分割されてしまう。
  3. 多くのFlash内のコンテンツは別のFlashファイルによってリンクされるため、リンクジュースあるいはページランクという観点から見て、良いリンクとはいえない。
  4. Flashファイルのクローラビリティを客観的に調査する方法がないため、あるファイルがどの程度のクローラビリティを持つかどうかは希望的観測に依拠する以外に方法がない
  5. Flashそのものは外部リンクを獲得しない。またFlashでサイト全体を作られたサイトはホームページ(ここでは本来の意味のトップページという意味)にリンクを獲得することができても、その他のページに対してリンクを獲得できない。
  6. アンカーテキストやalt属性、heading要素等SEOの基礎が適切に配置されないし、できたとしてもFlash開発者やデザイナーがそれらを適切に構築するのは非常に難しい
  7. そもそもFlashはクロールに適していない。また多くのサイトはJavaScriptによってFlashを呼び出す、あるいはFlashによって外部コンテンツを呼び出すテクニックを用いているが、Googleはこれらをインデックスできない

「サイト全体をFlashのみで構築する」ということは基本的にNG

したがってWEB担当者Forumに投稿された渡辺隆広氏の記事「Flashを多用したサイトはSEO的に不利なのでしょうか?」で、同氏が説明されているように、Flashコンテンツに基づいて、SEOを行うということは現状では非常に困難であるといわざるをえません。

Flashはクロール可能であり、したがってFlashを利用してもSEOは可能だと思っている方もいるのですが、残念ながらFlashを利用するならSEOの効果は限定的になるというのが現時点での結論になります。これは、「検索エンジンがクロールできる」ことと「サイト制作者が最適化できる」ことは別問題だからです。つまり、Flashコンテンツが何について記述(表現)しているかを検索エンジンに適切に伝えるための手段がないために、Flashコンテンツを任意のキーワードでランキング上位に表示されやすいように最適化することは困難なのです。

したがって、「サイト全体をFlashのみで構築する」ということはSEOの観点からは基本的にNGです。

Flashコンテンツを含むページを最適化する

もちろん、Flashが必ずしも、そのコンテンツをインデックスさせ、ページやサイトを最適化するためだけに用いられるわけではありません。例えば、Youtube動画に代表されるような、そのFlashファイルそのものが、魅力的なコンテンツを有している場合に、それを埋め込むページに対して、多くの被リンクを集めることは可能です。

私たちに親しみのある成功例としては、例えば京都のSEOコンサルタント松尾茂起のブログの松尾氏の「恋のSEO」などは被リンク獲得に大きく貢献しているFlashコンテンツのひとつだといえるのではないでしょうか。

他にも同氏は「ザ!結婚式~涙のスピーチ」や「SEO対策本部~検索エンジン最適化列伝」などFlashを用いたユニークなコンテンツを作成されているので、参考になるかもしれません。ちょっとユニーク過ぎるので逆に参考にならないかもしれませんが…。

あるいは、特殊なケースにおいてはFlashを用いてサイトを作成することで、より大きなメリットを得る可能性があります。例えば、デザイン会社やデザイナーのポートフォリオのようにデザインそのものが、そのサイトのメインキーワードであるような場合、HTMLだけでは到底表現できないようなサイトデザインを行うことで、ギャラリーサイトや、デザイン関連サイトから、適切にキーワードを含むような被リンクを受け取り、検索エンジンやポータルサイト上での露出を高めることは可能でしょう。

HTMLをベースに最適化する

とはいえ、やはりSEOを実践するサイトにおいて、Flashを積極的に活用するのが良いことであるとは思えません。既に紹介したように、SEOにとってマイナスの要素が多いということだけでなく、FlashがAdobeという企業に依存しているということも敢えて付け加えておきます。

この辺りのことについては、ここで長々と書くより、TechCrunch Japanの記事「Googleはプラグイン離れの正道, Microsoftはそれに逆行する邪道」を見ていただいた方が面白いでしょう。これはFlashについて書かれた記事ではありませんが、iPhoneで現在、Flashサイトを見ることができない(というよりはプラグインの開発とそのための交渉にAdobeとAppleが随分手間取っている)ことから分かるように、メディアによって、再生できないケース等も同時に考えるならば、Flashの持つ限界は明らかです。

またGoogleはサイトの読み込み速度を検索順位に加味する計画を着々と実行しているように思われます。最近ではサイトのパフォーマンスに関するデータをGoogleウェブマスターツール上で確認する機能が実験的に設置されています。Flashサイトがしばしばその重さで有名であることを考えるならば、サイトパフォーマンスの最適化のためにFlashを利用するのが適切かどうかについてまた異なった観点から考えることができるようになると思われます。

個人的にはFlashはやはり、ページ内コンテンツとして利用し、「Youtube SEO | ユーチューブを最適化する18の方法」で紹介したような手段を通じて、最適化されるべきだと思います。

あるいは、Googleのヘルプで紹介されているように、ページのHTMLテキストバージョンを用意し、重複コンテンツの問題を避けるためにFlash等のリッチメディアファイルをインデックスしないようにrobots.txt等でブロックすることで最適化を行うことができます。

この場合、同時にJavaScriptを用いてFlashファイルを読み込むような形にしておくとより効果的です。リッチメディアファイルに対し、HTMLテキストバージョンを用意することは、同時に、HTMLの標準化やアクセシビリティの向上にも貢献します。これはSEOの問題に関わらず検討されなくてはならない事柄だと思います。

いずれにせよ、現状ではあくまでHTMLをベースに最適化し、Flashはコンテンツの一部としてそのページ、あるいはサイトをより魅力的に演出できる場合に限定して使用するという比較的一般的な方法が無難だといえるんでしょうね。