情報アーキテクチャ(IA)とSEOはどのような形で関わり合うのでしょうか。適切にIAを実践できればSEOは必要ないという意見もあるかも知れませんが、IAが内部情報の適切な設計に関わる役割を果たす一方で、トラフィックを生むSEOを必要としているサイトは決して少なくありません。

ここでは、Adam Audette氏の『The SEO Guide to Information Architecture』の全訳を3回に分けてお届けいたします。

Audette氏は、SEOの視点から情報アーキテクチャを考え、そこからいわゆる内部SEOを実践することの重要性を説いています。しばしばクローラー対策一辺倒のサイト制作になりがりなSEOにおいて、今日、ユーザーに配慮した情報設計や導線設計が不可欠と考えられていることは周知の通りですが、それをいかに実践するかのヒントを、ある程度の分量で提供してくれているこの記事は貴重なものだと思います。

記事そのものは2008年5月1日付けのものですから、決して新しいものではありませんし、以下に挙げられている情報やテクニックの中には今では使いどころの難しいものも含まれています。例えば、ページランク・スカルプティング等はそのひとつの例ですし、Web標準や正規化に関しても、今日、当時とはまた違った状況の中で、新しいテクニックや知識が必要になっています。

とはいえ、Audette氏の記事には1年半が経過した今でも、見るべきところ、知っておくべきこと、整理しておく事柄が多く含まれていると思いますし、人によっては、ここに書かれた項目を出発点にして、古くなった情報を自身で更新するかたちで役立てることもできるのではないでしょうか。

翻訳にあたり、Audette氏にお願いしたところ、直ぐに快諾してくださいました。感謝します。

氏の記事はとても素晴らしいものですが、私の翻訳の拙さにより、その内容を十分に伝えられていない部分もあると思います。誤解を生みやすい表現や明確な誤りに気づかれた方はご指摘くださると助かります。

  1. SEO視点からの情報アーキテクチャ・ガイド(1/3)
  2. SEO視点からの情報アーキテクチャ・ガイド(2/3)
  3. SEO視点からの情報アーキテクチャ・ガイド(3/3)

SEO視点からの情報アーキテクチャ・ガイド(1/3)

当記事は検索エンジンによる効果的なスパイダリング(spidering)を目的として、最適化されたサイトアーキテクチャをデザインするための基本的なコンセプトを探るものである。スパイダリングされやすいサイトの構築は、インデックスとランキングに影響を与えるボット(Bot)が、ページやサイト、ドメイン全体を局所的に理解し、カテゴリー化する方法に波及的な影響をもたらす。

検索エンジン最適化の問題がここでの焦点である一方、検索エンジンの枠を超える、情報アーキテクチャ(IA)を様々に適用する。IAは他の専門領域と重なっている。そこには誘導可能性(ナビガビリティ)、ユーザー・エクスペリエンスそしてインターフェース・デザインが含まれる。この領域についてカテゴリー毎に話すのは困難である。なぜなら、IAがサイトにどのように適用されるかは、主として、ビジネスの目標、サイトのインフラストラクチャー、ユーザー・テストそして(リアルで)参加している人々のきまぐれを基礎にするからである。

しかしながら、その最も根本で、情報アーキテクチャはデジタルな目録を体系化することに関わる領域であり、それゆえに、体系化された目録はロボットや人間にも理解しやすい。

私は通常、サイト・アーキテクチャのSEO上の側面についてのみに焦点を当てることを望まない。というのは、それがエンド・ユーザー(とそれ以上に多く)を置き去りにするからである。サイト・アーキテクチャに関してアドバイスを行うとき、我々はインターフェイス・デザイナーや(時に)ユーザービリティ・エンジニアに加えて開発チームと共に作業を行う。我々は彼らのユーザービリティ・テストの結果を手にし、SEO上の目標とのバランスをとることができるようになる。このテーマは複雑である。SEO同様、情報アーキテクチャはウェブ制作のあらゆる局面に入り込んでいる。

最近、Magnus Brattemarkはthe LED Digestに、多言語サイトにのサイト・アーキテクチャについての質問を投稿した。これは頻繁に議論になるトピックであり、私はここでの投稿でいくつか私なりの答えを組み込む予定だ。それは同時に多民族的なサイト・アーキテクチャに固有の複雑さについて話すことになる。

最後に、私は(再び)ファインダビリティに関することと、それが、SEOでは簡単にはできないやり方で、いかにして我々をIAの領域へと導くのかについて触れることになる。私は未だにファインダビリティが至高の目標(the Holy Grail)であることに納得していないが、私はその役割に、とりわけ、それがウェブ・エコロジーを構成する、情報検索からユーザビリティまでの他の要素にいかにして適合されるのか、ということに、これまで以上の興味を持っている。

とりとめのない前置きは十分だろう。では始めよう。

情報アーキテクチャとは何か – 定義

我々は建物を形作る。その後では、それが我々を形作る。 – ウィンストン・チャーチル

この分野における古典的作品『Web情報アーキテクチャ―最適なサイト構築のための論理的アプローチ』において、Peter Morvilleは情報アーキテクチャを次のように定義している。

in・for・ma・tion ar・chi・tec・ture n.

  1. 共有された情報環境の構造的なデザイン
  2. ウェブサイトとイントラネット内部での体系化、標識化、検索及びナビゲーション・システムの組み合わせ
  3. ユーザビリティとファインダビリティをサポートするために情報の形と経験を形作る芸術と科学
  4. デジタルな展望にデザインとアーキテクチャの法則を持ち込むことに焦点をあてた実践に関する新興の専門領域及びコミュニティ

4つの固有の定義は全て貫くのがかなり困難である。これはIAを要約しながらも、それがいかに論理的であるかを指し示している。しかしながら、それは同時に、その柔軟性とSEOへの親和性を示している。我々はそれをいくつもの方法で定義することができる。最善のSEOはIAと多くで共通している。それこそが、多くの最良の検索マーケッターがサイト・アーキテクチャーに深く熟練している理由である。

我々の目的のためのさらにシンプルな定義は次のようになる。

情報アーキテクチャとはセマンティックな構造、そしてデジタルな目録の体系化である。

SEOに関して、我々は主としてスパイダーが容易に取得し理解するかたちで関連するコンテンツを提供することに注意を払っているが、我々は同時に、それを利用可能で、信用できて、魅力的で高品質にすることにも注意を払う。IAのようにSEOは、最初の戦略的な企画フェーズからランキングの維持とコンテンツの拡大までの、ウェブ制作のあらゆる側面の一部でなくてはならない。

我々は検索エンジンのためにサイトを作るのではなく、人々のためにサイトを作るのだ。訪問者のニーズとスパイダーのニーズのバランスをとることが決定的に重要な意味を持つ相違となる。

SEO(そして、さらに言えば、IA)は必ずしもデザインに関することではない一方で、ユーザビリティとインターフェース・デザインの原理についての理解は、テストをすることで得た経験的なデータを伴い、成約率やサイト訪問者の能力に応じた共有利用(meritocratic sharing)を改善することから大きな配当を得ることになるだろう(cold hard cashを読んで欲しい)。全ては互いに結びついているのだ。

IAというパズルのピース

サイトのアーキテクチャは(ほんの数例をあげると)ドメイン、セクション、カテゴリー、ページとメディアから構築される。これらそれぞれの説明は次のようになる。

  • ドメイン: トップレベル・ドメイン(TLD)。その中に複数のサブドメインを持つことができる
  • セクション: カテゴリー(と時に他のセクション)が位置する構成上の拠点を意味する
  • カテゴリー: ページやメディア(及び時に他のカテゴリー)の構成上の言及ポイントを意味する
  • ページ: XHTMLやPHP、ASP等の言語で静的ないし動的な(あるいはその組み合わせの)形式で構成されたウェブ・ドキュメント

  • メディア: 画像、動画、(PDFのような)ドキュメント、音声ファイル等

もちろん、これはサイトの構造を単純化しているのだが、我々の目的には適切である。

最適化されたIA: ドメイン

ドメイン名は検索プロセスの初期にユーザーに対して多くを伝える決定的に重要な意味をもつ物である。我々はドメイン名をSERPsで見、我々はそれを印刷物で見、我々は話でそれを聞く。良いドメイン名はまさに、サイトを形成する(あるいはブレークさせる)。すなわりマーケティングの視点からは決定的に重要なのである。

アーキテクチャの視点から、我々が留意しておくべき事は多い。ドメイン名はウェブ上の所有物全てを支える基礎である。次のベスト・プラクティスがこの基礎に組み込まれていることに注意して欲しい。

  • セマンティックな価値: 最も重要なキーワードを含むドメインはとても良いことだが、それだけに注意するべきではない。ドメイン(そしてそれほどではないにせよ、URL)内のキーワードは、サイトに緊密に適合する原則的なテーマを提供することで、付加的に関連性ポイントを獲得することに繋がりやすい。しかしそれはまた短かく覚えやすい(あるいは、もしあなたがうまくやれるなら、長くても覚えやすい)必要がある。それは他人と口頭で共有しやすい必要があるし、あなたのマーケットでの地位やブランドを反映するべきである。スパマーたちにひどく乱用されたことから、信頼性が乏しい傾向にあるため、ドメイン内の多すぎるダッシュに気をつける。概して、短いURLが高い価値と稀少性から信頼を得る傾向にある。

  • 正規化: 検索エンジン(とりわけGoogle)の漸進的な洗練により、重複コンテンツに関する懸念はそれほど顕著なものではなくなっていくだろう。しかし、「www」とルート・ドメインが同じコンテンツを表示しないよう、URLのリライトを行うことは未だ重要であるし、常にひとつのベスト・プラクティスである。Googleに関して、すべきことはウェブマスターツールの管理画面で正規URLの好みを特定することである。しかしながら、これを確実にするためには、他の検索エンジンが重複に関してちょっとした問題を起こさないよう、サイト・アーキテクチャに組み込むことである。これは同時に、見つけられ(あるいは引用され)やすいURLの形式がどれなのかということをコントロールし、内部リンクを単純化することから、被リンクの統一を確実にする助けになる。

  • 追加正規化事項: 基本的なURL正規化に加えて、サイトが厄介な事態に陥る別の展開がある。例えば、IISの古いバージョンは、ページ上の終了スラッシュを入力せずにアクセスすると、それを表示するために302メタリフレッシュを用いている。 これはISAPIリライトツールのようなもので簡単に解決される。

    また、サイトの内部リンクに一貫性があるようにしたい。Joomla!のような一部のコンテンツ管理システム(CMS)は複数の種類のページを作り、サイト内の複数のURLをそれらにリンクする。Joomla!の問題は、とりわけ、それらのトップページの取り扱いが悪いことだ。数十の異なるホームページを作ることができるし、それぞれがサイトの様々なセクションからリンクを得る。標準的なルールを用いてページにリンクするようにし、それを続けよう。

  • クローリング・エラー: Googleウェブマスターツール内で、サイトのクローリング・エラーをチェックし、分析と修復のために全ての結果をCSVへエクスポートすることができる。サイトのリンクの統一性やその他のことを検証するために、定期的にXenu(あるいはそれより強力だが、自分自身で行わなければならない何か)のようなツールでサイトをクロールした方が良いだろう。

    過度な404エラーはGoogleでランキング・ペナルティを引き起こすことになる。だからこそ、チェックしたい事柄なのだ。

    ■傍注: 見えるページランクと見えないものの両方が存在する。あなたがそれの本当の価値(価値のなさ)を理解する十分な経験を積まない限り、見えるページランクは無視しよう。見えない方のページランクに関して?それはここから始めるのが良いと思う

  • リダイレクト: 期限切れ、存在しない、あるいは移転されたページを適切にリダイレクトする方法(art and science)がある。一般的に、(a)ページが新しい場所へ移動した、(b)訪問者が404エラーページによって困惑させられたり、苛々させられたりしがちである、(c)別のページが期限切れだったり、削除されたページのコンテンツと密接に関連しているといった場合に301恒久的リダイレクトを広く活用したい。302暫定的リダイレクトもまた幅広く使われるが、それは301がするようにページランクを渡さないし、(ブラウザ調査のような)特定の場合にのみ用いられるべきである。リダイレクトには良い用いられ方と悪い用いられ方がある。それらについてはまたの機会に話したいと思う。

    差し当たっては、「それが訪問者にとって良いことか?」という黄金率を覚えておくだけでいい。多くの場合、サイト全体を301することは訪問者にとって良いこと【ではない】。蓄積されたページランクを利用したいと願う、(また、サイトを獲得して、それらを目的のためにリダイレクトすることで全体的な戦略が組み立てられている)サイト所有者にとっては良いことだが。一般的に、サイト全体を恒久的にリダイレクトすることは頭で考えるほどに多くの利益を生まないだろう。時にはいくつかのページをリダイレクトすることでテストするのが良いだろうし、時には予定されている変化に関するメッセージを付けて、特定の期間サイトを残して置くのが良いだろう。そして、もちろん、時には何もせずにサイトを残して追いて、別に作り上げるのが良いこともある。

  • ドメイン登録: ドメイン名を期間の上限(10年)まで登録することは、品質管理の理由で、登録機関である(あるいは尋ねた人によっては、のぞき見の権威である)Googleから付加的な品質の報酬を与えられるだろう。

  • 多言語的なドメイン構造: 異なる国々や言語で作られたサイトを管理するいくつかの方法がある。最初であり最良の方法は固有のサイトとコンテンツを持つ、ある国に特化したTLDを作ることである。ローカル化は決定的に重要であり、スペインのサイトなら、メキシコではなく、スペインに特有の言語を持つことを確実なものにしよう。第2の方法は、最初のものには劣るが、それぞれの言語版のサブドメインを作成することである。第3の方法は、最も望ましくなものだが、それぞれの言語を扱うディレクトリ構造を作ることである。この場合、扱っている国の言語を用いてディレクトリに名前をつけるようにしよう。ドイツ出身者にとって、www.domain.com/deutsch/index.htmlではなくwww.domain.com/german/index.htmlに誘導されることほど気にさわることはない。

    Antonio Diasがコメントで指摘しているが、Googleウェブマスターツールは今日、ディレクトリとサブドメインに言語的な優先を特定することを許可している。クールだね!アドバイスをありがとう、Antonio

    最初の方法はGoogleウェブマスターツールにドメインを認証させることができ、ジオ・ロケーションを特定できることを含めて、多くの利点がある。国際的なTLDが、言語に特化した種類の検索エンジンや地域ディレクトリにインデックスされ、一覧に表示される一方で、多くのサブドメインやディレクトリのローカル化戦略ではそうならないだろう。

    それを全部併せて、それぞれの国に特化したドメインを選択できるバージョン・セレクターを持った、国際的なハブページ(あるいは小さなサイト)を持とう。これはスパイダリングを助け、ユーザーが利用したいと思うサイトのバージョンを選択できるようにする。ブラウザー特定スクリプトは、訪問者の制御性を低下させることになる。言語のバージョンを扱うのにブラウザーの言語を信用しないことだ。これは同時にブラウザ調査を設置して、302リダイレクトを諦めることでもある。

関連情報

Adam Audette氏はAudetteMedia社のプレジデントであり、著名なSEOストラテジストでもあります。ザッポスやマイクロソフト、インテルといった大企業で、マーケティングやコミュニティ戦略、SEOなどを手がけてこられました。氏の著作や記事に関する情報はこちらの「Adam Audette: Founder of AudetteMedia」で取得出来ますし、Twitterでフォローすることも可能です。

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  1. SEO視点からの情報アーキテクチャ・ガイド(1/3)
  2. SEO視点からの情報アーキテクチャ・ガイド(2/3)
  3. SEO視点からの情報アーキテクチャ・ガイド(3/3)