2009年10月5日から3日間、ニューヨークで、SMX East(Search Marketing Expo)が、開催されています。そこでは検索エンジンの代表が次々に重要なことを発表しています。

本当に色々な情報が一気に提供されており、非常に興味深いのですが、その主要な事柄は既に鈴木謙一氏による投稿(「発リンクはランキングに影響を与えるのか」)がありますので、その辺りに関しては鈴木氏の記事を読んでいただくとして、ここではその中でもcanonicalタグに関することを採り上げたいと思います。

2009年10月5日、Danny Sullivan氏がTwitter上で次のように呟いていました。

google announced cross domain canonical tag coming by end of year #smx
google announced cross domain canonical tag coming by end of year #smx

つまり、Googleが年末までにクロスドメインに対応したcanonicalタグを実装するということを公式にアナウンスしたといことなのですが、これはとても重要な意味を持ちます。

ここでいうcanonicalタグはもちろん、rel=”canonical”属性とはのことで、例えば、ドメインとサブドメインwwwやセッションIDが付加されたURLが別々にインデックスされてしまうのを避けたいとき、.htaccess等を利用したリダイレクト等制限があって他の手段ではそれらが同じものだとクローラーに伝えることができない場合等に、どれが「正統かつ基準となる(canonical)」URLなのかを伝える役割を果たします。

<link rel="canonical" href="https://www.seomode.jp/" />

この措置は、主として、別々のURLに分散された被リンク等を統一し、元来のURLを持つページの評価を統一する効果があるため、非常に重要な役割を果たしています。

しかし、これはあくまで、ひとつのドメイン内に限定された話で、ドメインが異なる場合はその効果を発揮することはできませんでした。

これに関してはMatt Cutts氏が以前、 Brent D. Payne氏に宛てたダイレクト・メッセージの中で次のように呟いていたのを思い出します。

google announced cross domain canonical tag coming by end of year #smx
@BrentDPayne rel=canonical doesn’t work cross-domain.

しかし、Googleがrel=”canonical”属性をクロスドメインに対応させることで状況は大きく変わります。複数のウェブサイトを所有するウェブマスターはより柔軟にコンテンツを運用できるようになるからです。WebProNewsの中でChris Crumが挙げている例が分かりやすいので以下に引用します。

if the Chicago Tribune has an article on the New York Times, and the rel=canonical points to the Chicago Tribune then Google will only credit the Chicago Tribune with the content.(シカゴ・トリビューン紙がニューヨーク・タイムズ紙上にある記事を持ち、rel=”canonical”属性がシカゴ・トリビューン紙に向けられているならば、Googleはその記事でシカゴ・トリビューン紙だけを評価するようになる。)

つまり、例えドメインが異なる場所に書いたものであったり、コピーされたものであってもrel=”canonical”属性がそれを書いた者のサイトを指しているならば、そのへの評価は、全て書き手に渡せるということです。

もうひとつ例をあげるならば、私は無料ウェブ素材Tyto-Styleと当ブログSEOモードの2つをメインに活動しています。SEOモードは主にSEOやHTML・CSSなどの情報に関わることを、Tyto-Styleではデザインに関わることを取り扱っています。しかし、例えばウェブデザインとSEOの両方に関わるhtmlに関する記事などは両方のサイトに投稿したいのですが、現状では、2つに同じ記事を投稿すると、ひとつの記事がそれぞれのサイト内で別々に評価されることになります。

HTMLに関する記事に関しての検索エンジンからの評価はSEOモードに与えたいと考えていますが、現実にはTyto-Styleの方がアクセスが多く、認知度も高いのが現状で、被リンクを得易くなっています。こういう場合に、クロスドメインに対応したrel=”canonical”属性があれば、両方のユーザーに情報を提供しつつ、Tyto-Styleを通じて、SEOモードに評価を与えることができるようになります。

Googleは最近、重複コンテンツのペナルティ説を否定したり、あるいは2つのサイトを統合する方法を紹介したりしていましたが、これらを踏まえたうえで、クロスドメインに対応したrel=”canonical”属性が採用されることでより柔軟なコンテンツの使い回しや再利用が可能になったといえます。

また、色々なところでたびたび話題になっているように、ウェブサイトの国際化というものを考える時に、別々のドメイン、違う言語で公開されているものであっても、そのコンテンツの評価をひとつの重要なサイトに統一できるということは、サイトを作成する者にとってはありがたいことだと考えています。もちろん、敢えてrel=”canonical”属性を利用しないことで、ドメインごとに別々の評価を受けることも可能でしょう。

但し、この件については、Googleのシェアが圧倒的なアメリカやイギリス等ではとても大きな意味を持ちますが、日本ではその効果は限定的です。Yahoo!やBingは依然として、ドメイン内でのrel=”canonical”属性の採用を表明し、その実現に取り組んでいるに過ぎず、それですら年内の採用が期待されるに留まっているからです。

個人的には、BingやYahoo!がGoogleに続き、rel=”canonical”属性を正式に導入し、なおかつ、rel=”canonical”属性がhtmlのヘッダではなく、body内で有効に作用する形で採用されることで、コンテンツが他人に無断で利用されるようなケースに対する有効な防止策になればと考えていますが、そこまで踏み込んでくれるかどうかは定かではありません。

いずれにせよ、今回のGoogleのアナウンスは歓迎すべきことだと考えていますし、Yahoo!やBing、その他検索エンジンを含めて、クロスドメイン対応のrel=”canonical”属性がより広く採用される日を期待して待ち続けたいと思います。

関連記事