12月4日にGoogleがその記事「Personalized Search for everyone(あらゆる人に向けたパーソナライズ検索)」で発表した新しい機能「パーソナライズ検索(Perdonalized Search)」の導入は、大きな衝撃でした。
パーソナライズ検索については『SEMリサーチ』の記事「米Google、パーソナライズ検索を拡張、Cookieを使った検索結果カスタマイズを開始」で非常に簡潔に定義されています。
パーソナライズド検索(Personalized Search)とはユーザの興味や関心、過去の検索行動や検索場所(IPアドレス)、ブラウザの言語設定などのデータを参照して、検索結果を個別化する検索サービス。
ご存知のように、今回の機能の導入以前に、Googleはその第1弾ともいうべき「パーソナライズ検索」を既に導入していました。但し、それはあくまでGoogleアカウントを有するユーザーが、Googleにログインしており、かつウェブ履歴の機能を有効にしているときにのみ、そこに蓄積されたデータを元に検索結果をカスタマイズして提供するという、かなり限定された機能に過ぎず、それ故に、その影響は限られていました。
今回の新しい「パーソナライズ検索」はその機能をさらに拡張したもので、ユーザーがGoogleにログインしていない状態でも、それまでの行動からブラウザに蓄積されたクッキーを利用し、過去180日間の検索履歴を参照して、そのブラウザの利用者用に検索結果をカスタマイズして提供するものです。したがって、その影響はこれまでのものとは比べられないほど大きくなったといえます。
とはいえ、私はこの影響が非常に大きく、SEO従事者にとって深刻なものである一方、「SEOは死んだ」と一部の人々が主張するような影響を与えるものではなく、むしろ今後SEOは重要性を増すと考えています。以下で、私なりに集めた情報を中心に、今回のGoogleの機能拡張が与えるであろう影響について、書いてみたいと思います。
パーソナライズ検索は無制限に適用されるのではない
まず、パーソナライズ検索が無制限に適用されるわけではないということを説明しておく必要はあると思います。
パーソナライズ検索は一定の手順を踏むことで、無効化することが可能です。
その手順については、Googleが公式に説明しています。
それによると、その手順はログイン時に適用されるパーソナライズ検索とログアウト時に適用されるパーソナライズ検索によって異なります。
前者の場合、単純にウェブ履歴を消去し、このサービスを無効化する手順を踏むことで、パーソナライズ検索を無効化することができます。一方、後者の場合、ウェブ履歴を無効化する手順を踏んだ上で、ブラウザに保存されたクッキーを消去する必要があります。
またサービス自体を無効化するわけではありませんが、パーソナライズされていない検索結果にする手段としては海外SEO情報ブログの鈴木氏が「Googleパーソナライズ検索の拡張がSEOに与える影響とは?」で解説されています。
検索結果のURLの末尾に、"&pws=0"のパラメータを付けるとパーソナライズされていない検索結果になります。以前からありますが、依然として有効です。
このように、パーソナライズ検索を無効化することは可能です。しかしながら、問題であるのは、おそらくGoogleを利用する検索ユーザーの大半が、この機能をあえて無効化することはないだろうということです。そもそもこのサービスが適用されていることすら気付かずに利用し続けるユーザーが決して少なくないだろうと思われます。
パーソナライズ検索を構成するもの
次に、パーソナライズ検索と一言でいってもいったいそれがどのような要素によって成り立つものなのかを考えてみなくてはならないと思います。これに関しては、『HuoMah SEO Blog』のDavid Harry氏が「The SEO guide to Google personalized search」で詳細に説明しています。
同記事によると、「パーソナライズの種類(Types of Personalization)」は次のようになります。文中の(?)は私が付けたものではなく、原文のままです。
- 地理的要素 – ローカライズされたTLD、IPアドレス、クエリ分析
- 技術的要素 – ブラウザ、OSの性能、クッキー(?)、ツールバー(?)
- 時間的要素 – 日の時間、年月日、履歴データ
- 行動的要素 – クエリの履歴、SERPの相互作用、選択と直帰率、広告との相互作用、ネットの利用習慣(頻繁な利用者へのより新鮮な結果の提供)
また、これに加えて、「パーソナライズ要素の可能性があるもの(Possible personalizations)」として以下のものが上げられています。
- ソーシャル検索要素 – ブックマーク(とその共有)、購読(とその共有)、投票行為 / SERPの操作 / 共有ツール
- ユーザー層の要素 – サービスのアカウント(検索エンジンのプロフィール)、ツールバーのデータ(オートフィル)、検索パターン(クエリの種類)
- ウェブ履歴(間接的データ) – 検索リファラーの有無、ツールバーやブラウザからのトラッキング、サイトとの相互作用、パーソナライズされたページランク、行動履歴、カテゴリーの区分、調和ランク
ここから分かることは、パーソナライズ検索、といいますか、「検索結果のパーソナライズ化」は、単純に、「『ウェブ履歴』や『ネットでの行動』ではない(not simply ‘search history’ or ‘surfing behaviour)」ということです。上で一覧にしたような様々な要素が総合的にパーソナライズされたSERPsに影響を与えます。そして、もちろん、SEOの要素が影響を与えることはいうまでもありません。
ここで付け加えておきたいのは、我々は既にこれらのうちいくつかを知らない間にGoogleに(そしておそらく他の検索エンジンからも限定的ながら)利用され、SERPsをパーソナライズ化されて提供されていることです。
例えば、直前の検索行動の影響や、ブラウザによる違いはしばしば話題になりますし、プロバイダの場所などによって私たちの検索結果は明らかに異なるものになっています。また考え方によっては、SERPsを見るタイミングによる影響は最も顕著ですね。私たちはアクセスがほんの数分違うだけで全く異なるSERPsを見ることは決して少なくありません。こうした時間的要素も私たちにパーソナライズされた結果を与えているといえます。
つまり、私たちは既に多くの「違い」の中で検索行為を行っています。今回のパーソナライズ化によってもたらされる影響は決して小さなものだとはいえないと思いますが、これまでのSERPsを必ずしも直ぐに一変させるようなものではないとも思います。
もちろん、現時点で、私にはGoogleが個人のウェブ履歴や行動に対し、どれくらいの比重を与えるのかを理解することはできていません。この点に関してはGoogle以外に知りようがないともいえますね。
SEOの終わり?
以前からそうでしたが、このようなパーソナライズ検索が浸透する(あるいはそう思われる)時に、必ず登場するのが「SEOの終焉」という議論です。今回の機能の導入で、私も実際にその言葉を耳にしましたし、以前からも「Googleのパーソナライズ検索が始まればSEOは終わる」という話を何度もされました。
彼ら/彼女らが根拠にするのは、大抵の場合、それは特定のキーワードにおけるSERPsでの順位を客観的に測定することができなくなるから、というものです。確かにSEOに順位表示の話はつきものです。多くのユーザーそして、多くのSEO従事者が特定のキーワードにおける順位を基準としてSEOを行っています。
しかし、それはSEOの終わりなのでしょうか。もし、特定のキーワードにおいて順位を保証するのがSEOであるならば、確かにかなり深刻な影響を与えるといえます。ですが、例えそうであったとしても、順位が保証されたことは今までもありませんし、成果報酬のようなシステムに関しても、多くのクライアントは、特定のツールを利用する、あるいは特定の画面を見る、特定の期間を基準とするなどSEO業者側が提示したルールに則って順位を測定しているのではないでしょうか。
少なくとも、私はSEOが順位を目的としたものだと理解していません。分業化するウェブ業界で、SEO従事者に期待されているのが順位上昇であったとしても、それは成約率やリピーターの増加という、より重要な目的のための手段を提供する役回りであって、特定のキーワードにおける上位表示そのものを目的とするものではないと思います。
SEOは今後ますます重要になってくる
SEOが、埋れているコンテンツや商品をより多くのユーザーに提供するための手段であると同時に、特定のキーワードにおけるSERPsでの順位ではなく、検索エンジン経由のアクセスや成約率・リピーターの増大に捧げられているならば、我々がすべきことはこれまでとそれほど変わらないと思います。最適化されたページやサイト、あるいはコンテンツは、例え特定の検索結果で一番にならなくてもユーザーの前に提示されるはずですし、一旦その使いやすさや素晴らしさが認められれば、むしろパーソナライズされたSERPsで優位に立つことができると思うからです。
但し、その場合においてもチャンスがこれまでよりも限定されてしまう可能性は否定できません。Search Engine LandのDanny Sullivan氏は「Google’s Personalized Results: The “New Normal” That Deserves Extraordinary Attention」の中で次のように主張しています。
Does this mean SEO is dead? No. I’ve warned for years that search results would be getting more personalized. Still, for many queries, there will continue to be “normal” results until Google harvests enough information to start personalizing them. SEO remains important to ensure that you’ve got that first shot at being considered. And the best tip in this new world of personalization remains the same. Make a good impression. Titles and descriptions are important, as is having outstanding content.
これはSEOが死んだことを意味するのだろうか。否。私は検索結果はますますパーソナライズ化されると何年も警告してきた。依然として、多くのクエリに関して、それらは「普通」の結果であり続けるだろう。Googleがそれらをパーソナライズし始めるのに十分な情報を収集するまでは。SEOは、我々が、考慮されることになる最初の好機を確実にものにするために重要なままである。そしてこの新しいパーソナライゼーションの世界における最良のテクニックは同じである。良いインプレッションを作る。タイトルとディスクリプションは、傑出したコンテンツを持つことと同様に、重要である。
(※訳者注 – 文中の「普通」という表現は、Sullivan氏が、Googleが今後ユーザーに提供するパーソナライズSERPsを「新しい普通(New Normal)」と表現し、それ以前のSERPを指して使用しているものです)
私は今後ますますSEOが重要かつ必要となってくると思っています。もちろん、私がいうSEOとは順位を目的としたSEOのことではありません。ここでいうSEOとは、検索エンジンに確実にインデックスさせる一連の技術、少なくなるSERPsへの出現率を生かすタイトルやスニペットの最適化、そして、直帰率を下げ、パーソナライズ化されたSERPsの中で「いつも利用するサイト」になるためのコンテンツの充実、あるいは充実へ繋げる一連の試みや導線・情報設計のことです。
また同時にソーシャルメディアの影響力も増してくると思われます。ユーザーにとって特定のSERPsが今後、ある程度固定化されてしまうのは避けられませんし、そういったユーザーにSERPs以外で新しいサイトを提供するのはソーシャルメディアである可能性が高いからです。
パーソナライズ検索によってSEOが終わるとは思えませんが、SEO従事者を取り巻く環境が厳しくなっていくとは思います。改めてSEOというものを再考し、ソーシャルメディアやそれ以外の要素も含む視点からSEOに取り組むことの必要性は今後これまで以上に高まってくるのではないでしょうか。