ウェブサイトを作成する上でユーザビリティの確保と検索エンジンへの最適化はしばしば衝突します。人間向けに専念して作っているところに、クローラーに向けたメッセージや機能を追加したり、変更を加えていくわけですから、ある程度はどうしようもない部分もあります。また、我々の努力だけでなく、検索エンジンサイドでの機能向上も必要になってきます。

理屈から言いますと、そもそも、SEOとユーザビリティのどちらをとるか、という問いかけがあまり適切なものではありませんが、敢えていうなら、個人的にはSEOよりもユーザビリティを重視してウェブサイトを作成しようと心がけるようにしています。

というのは、検索エンジンからのトラフィックは、場合によって、その他の手段で代替可能ですが、一旦ユーザーがウェブサイトを訪れた後では、そのページは代替が効かないからです。たいていの場合、ウェブサイトは何らかのキャンペーンやブランディング等におけるオンライン上のハブとして機能するため、そこが問題をあまりに多く含んでいると、いくらトラフィックを確保したところで、目的には貢献しないからです。

しかしながら、一方で、SEOを軽視し、例えば検索エンジンを完全に無視するのも得策とはいえません。検索エンジンからの流入は未だ大きい割合を占めていると考えていますし、ソーシャルメディアやオフライン/オンラインの広告等を通じた宣伝が上手くいかない場合の代替策として機能します。

今回紹介するのはMike Tekula氏の『11 Usability Mistakes SEOs Make』という記事です。氏はこの記事でSEOを行う者がユーザビリティに関して、ついやってしまいがちな過ちを11の項目に分けて説明しています。以下で抄訳と解説を交えて紹介したいと思います。

SEOが陥りやすいユーザビリティに関する11の過ち

1.「キーワード密度」をコンテンツに影響させること

説明を要約すると、とてもシンプルです。「Write for users, not search engines.(ユーザーに向けて書こう。検索エンジンではなく)」。もし、ユーザーを本当にコンテンツへ引きつけたいのならば、そこでは全ての文章、全ての言葉が重要であり、そこで引きつけられないならば、そのコンテンツは何のために存在するのか分からなくなります。Tekula氏は次のように言っています。「もしあなたが『キーワード密度について考えているならば、それは時間の無駄だ」。

2.「テキストリンク」を用いるためにグラフィカルユーザインタフェースを殺してしまうこと

テキストリンクは非常に重要です。サイトの最適化に不可欠で、検索エンジンに対して、そのサイト、あるいはページがどのようなキーワードに関連しているのかを伝える役目を果たします。「しかしそれは、ユーザー・エクスペリエンスが完全に消してしまうべきだということを意味し」ません。Tekula氏はここでCSSを巧みに使うことを提案していますが、CSSによって要素を隠すことはあまり好ましいことではありません。私の意見としては、時と場合によりますが、Javascriptやもうひとつ異なる形でのリンクを作成する手段をとる方が良いのではないでしょうか。

3.「ロングテール」によるトラフィックを取り込む目的で、成約プロセスを複雑にすること

ロングテールはSEOにとってとても重要な手法のひとつです。ただTekula氏は過度なロングテールによってサイトにページが増えすぎ、導線が複雑になることでユーザーが混乱することを懸念しています。すなわち「それがユーザーの助けにならない限り、ページを追加してはならない」。もちろん、理想からいえば、全てのページはユーザーの助けになるべきでしょう。ただ現実的にはなかなかそういうわけにもいきません。ページを追加する場合、ウェブサイトの構造やナビゲーションの適切な配置等によって、情報を整理した上で追加されるべきだとは思いますが。

4.テキストの大きな塊でユーザーを追い払わないこと

テキストの塊は検索エンジンに好まれ、より多くのキーワードで検索される可能性を増やします。とはいえ、「テキストの巨大な塊は、ユーザーにとって壁紙の重要性に等しい。すなわち、それはそこにあるが誰もそれを見ない」。長くなる場合は、語彙やデザインなどをよく考え総合的な可読性を挙げる努力をすべし、というのが氏の意見です。個人的にはちょっと耳に痛い話です。とはいえ、氏がここでいっていることは、SEO目的で文章を冗長にする行為が宜しくないということですよね…。

5.行動志向型リンクにおけるキーワードの活用

ユーザーの行動を喚起するため(コール・トゥ・アクション)のテキストは、内部ページの検索結果を挙げるのに効果的です。一方で、当然のことながら、このテキストはユーザーの行動に決定的に重要な役割を果たします。ここに使われる文言には注意を払うべきでしょう。SEO目的でキーワードを詰め込むのもよくありませんし、逆に「続きを読む」「詳細を見る」など一般的な言葉であっても意味がありませんよね。

6.Titleタグにキーワードを詰め込むこと

タイトルタグがSEOにおいて非常に重要な役割を担っていることは周知の通りです。氏はここでタイトルへのキーワード詰め込みは2つの点で問題であるとしているます。ひとつは、検索エンジンのガイドラインに違反しており。ペナルティを受ける恐れがあること。もうひとつは、SERPsにおけるユーザーのクリック率が低下することです。

7.Desicriptionタグをターゲット・キーワードに利用すること

これは6つ目の項目との関連であげられていますね。メタ・ディスクリプションは検索順位の改善に影響することはありませんし、ここにキーワードを詰め込むことは無意味です。むしろクリック率を向上させるための最適化をはかるべきですよね。

8.「最適化された」コンテンツを置くためにCTAを乱暴に押しのけてしまうこと

上述したようなコンテンツの拡張によって検索エンジンからのトラフィックを増やす手法はSEOにおいては有効な手法です。コール・トゥ・アクションが適切に設置されず、クリック率が低下してしまってはトラフィック増加の意味がありません。SEOによるトラフィックを増やすために、ユーザビリティを低下させないことが重要になってきますね。

9.言葉の選別を拒むこと

類義語をコンテンツに混ぜることで、異なるフレーズからのトラフィックを生み出そうという傾向は確かにあります。氏はそれによってユーザーが混乱する可能性を指摘しています。これを避けるために、例えば私の場合は、補足分や注釈を付けることで、コンテンツに類義語を織り交ぜる等の工夫するようにしています。

10.イメージが適切に機能するところでテキストを使うこと

Tekula氏はSEOが「テキスト第一、画像を二の次」と考える傾向を問題にしています。一枚の画像が多くを語ることがあり、それを無意味な言葉で無駄にしてしまわないように忠告しています。これは画像だけでなくフラッシュや動画でも同じことがいえると思います。確かにその通りですが、難しい問題ですね。バランスが大切だと思います。もし、氏のいうとおりにしてSEO効果が全く現れないのであれば、それはSEOをそのページのトラフィック獲得に使うこと自体が間違っていますね。

11.複数のキーワードをターゲットにすること以外に意味のない「複数のSEOページ」を追加すること

少し意味がとりにくかったのですが、おそらくキーワードを変更しただけのようなページを追加することに意味がないということがいいたかったのではないでしょうか。既存ページの書き換えではなく、全く新しいページを追加することで、新たな機会を得る方がいいのではないか、という意味でしょう。

まとめ

以上、11項目を紹介してきたわけですが、どれも基本的な事柄で、既にいくつものサイトを運営されている方々にはとりたてて新しい情報はないでしょう。Mike Tekula氏自身、記事のコメントに「この記事は『新人SEOがおかしやすい11のユーザービリティの間違い』に名前を変えた方がいいんじゃないか」などといわれています。

これに対し、Tekula氏は「あなたは正しいけれど、若く、うまく規制されていない業界だから、ベテランよりはるかに新人の方が多い。それに一部のマーケティング/広告の大企業でもこういった過ちを犯しているのも見たことがあるんだ」と返しています。

SEOをどの程度組み込んでいくかは案件によりますし、それでもユーザビリティを完全に損ねてしまうべきではありません。慣れてきたときほどあまり意識せずにスルーしてしまいがちな項目だからこそ、意識的に気をつけるようにしたいところです。自戒の意味も込めて記事にしてみました。